2023.04.11
おしゃれなリフォーム・リノベーション
過去1000件以上のリフォーム・リノベーションに携わった建築士が思う
おしゃれで良いリフォーム・リノベーションとは
材木:栃木の県産材の桧 壁仕上げ:栃木の葛生の漆喰(外部には外壁用を使用)
自己紹介など
建道株式会社一級建築士事務所の鈴木です。
栃木県に事務所を構えて17年が経ち、弊社が請け負ったリフォーム・リノベーションの契約数は700を超えました。リフォーム・リノベーションの費用は、数万円から数千万円と様々です。ある程度の費用になるとキッチン、浴室、洗面、トイレを含めた、間取りを変更するリフォーム・リノベーションが多いと思います。そして、勤めていた時代の実績も含めると、1000件以上のリフォーム・リノベーションに携わることができました。これだけの方に必要とされ、大変、感謝いたしております。ありがとうございます。
ただ厳密に言うと、契約数は700を超えておりますが、依頼してくださったお客様は約220件になります。平均すると1件のお客様から3回以上の依頼をいただいていることになります。本当にいつもありがとうございます。
私が思うおしゃれで良いリフォーム・リノベーションの共通点
このような私が「良くできたなぁ」「おしゃれに仕上がったなぁ」と思えるリフォーム・リノベーションには共通点がございます。
それは“リフォームしたのか分からないくらい違和感なく仕上げられた”と感じることです。
「リフォームしたのか分からないくらい」はオーバートークになりますね(笑) でも「違和感なく仕上げられた」時は良くできたなぁ、目立たないけどむしろおしゃれに仕上がったなぁと自己満足しております(笑)
期待していた答えと違ってガッカリした方や、言っていることが良く分からい方も少なくないと思いますが、私は流行を取り入れればおしゃれになるとは思っていなくて特に既存が残るリフォーム・リノベーションでは、流行を追いすぎるのは危険性を感じます。
では、私が「良くできたなぁ」「おしゃれに仕上がったなぁ」と思う、ひとつの自社事例を見ながら説明します。
既存の良いところを探すことからはじめよう
下の写真はお寺の庫裡(クリ:住職の住居部分)です。
【施工前の写真】
お寺は日中でも人通りが頻繁で、洗濯物を干す場所に困っておりました。そこでサンルームを設置したいと相談をいただいたのです。お客様から渡されたイメージは、アルミメーカーのサンルーム画像でした。やはり建物全体とのバランスが気になり、候補は比較的高額な木目調の商品でした。
そこで木造で増築する手作りサンルームの提案を差し上げたところ、建築が好きで詳しい住職からも意見がどんどん出てきて、素敵なサンルームとなりました。
完成写真に移る前に、なぜ木造の手作りを提案したのか、もう少し詳しく話をします。リフォーム・リノベーションをおこなうとき、いつも「既存の良いところはどこだろう」と探すことから始めます。この習慣は新築でも同じで、新築の場合は「この土地の良いところはどこ、あるいは、周辺環境の良いところはなんだろう」と探すのです。
話は戻り、上の写真でも分かるように既存の大きくて深い大屋根は大変、魅力的です!
そして深い軒の出を支える、細かい間隔で続く垂木も美しく、素朴だけど木と漆喰だけで仕上げられた外部も味わい深く感じました。
これらの良いところを残したい、または今風にしつつも真似したいと思ったのです。
提案プランをもとに、お客様と会話をする大切さ
下の画像が提案した木製サンルームになります。中を見えにくくするため曇りガラスとしたプランを提案しました。
【下の画像はイメージパース】
悩みつつ無難な既製品で検討していたお客様も、手作りの木製サンルームは大変気に入っていただけました。しかし、曇りガラスと言っても近くの洗濯物は意外と見えてしまうため、腰壁を設けて見えにくくしたいと住職やご家族からご意見をいただき、プライバシーを重視して再プランする運びとなりました。このように、建築士として鈴木個人としての考え方を含めた提案プランを作成することで、有意義な意見交換が可能となり、プランも充実するのだと考えております。
実際の仕上がりは完成写真となりますので、見てみください!
見た目だけではなく長持ちさせる工夫とともに、劣化を受け入れることの大切さ
【施工中の写真】
実は弊社の事務所も木製サンルームのような正面になっていて、柱、梁はもちろんのこと、ガラスの押し縁や枠など全て木で造作しました。しかし木は痛みます。
その事務所の経験を生かし、雨仕舞や経年劣化対策としてアルミも部分的に使用しました。水を受けてしまうところや、木口のように水を吸いやすい木部をアルミ材で上手にカバーしたのです。
和風ではないのに和と馴染む、木製サンルーム
【完成写真】
写真では見づらくなっておりますが、左右に広がる既存の庫裡とも馴染んで違和感がありません!サンルームですからガラス面も多くなりますが、木製のブラインドを組み合わせ、太陽光と視線を調節できるようにしました。細かい間隔で並ぶ既存の垂木は先端を見せて繋がりを感じる仕上げとなりました。全体の雰囲気を壊すことなく上手に、かつ、おしゃれなサンルームになったなぁと自己満足した瞬間です。
相乗効果が得られる外構工事と灯り
手作りの木製サンルームと合わせ、外構工事のご依頼も!
夜、灯りがともると、昼間とは違う印象になります。
まとめ
私が思うところ、リフォーム・リノベーションで一番難しいのが、既存の古い部分とリフォーム・リノベーションによって新たになった部分の取り合いだと考えています。仕上がりだけでなく構造を含めた施工面など、全てにおいて難しくしているのが新旧の取り合いなのです。
割り切ってガラッと変えてしまう潔さも必要
既存の雰囲気を大切にした仕上げかたも必要
手付かずの古い部分が残るのに、最新の価値や技術を取り入れることも必要
など
今回は構造や断熱・気密性能の話に触れることはしませんが、仕上げ方ひとつとってもリフォーム・リノベーションって、本当はとても難しいのです。
このようなリフォーム・リノベーションですが、どんな現場でも必要なことは、既存の良いところを探すことだと思います。
今、流行っている「物」や「事」など数か月後、あるいは来年存在しているかさえわからないのに、数十年経っても良いなぁと感じる「物」や「事」って凄いと思いませんか!そのようなところを見つけて活かせるような仕上げ方ができれば、きっとおしゃれで良いリフォーム・リノベーションになると私は思うのです。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
リフォーム・リノベーションの経験から培った仕上げ方の価値観は、新築の設計にも大きく影響をしています。次回は、平屋、2階建て新築設計の仕上げについて記事をUPします。