2026.08.24
蓄電池導入の効果|電気代を年間いくら節約できる?
きっかけはプラグインハイブリッド車(PHEV)の購入
弊社で平屋の新築住宅を設計・施工させていただいたお客様から、お引渡しから3年が経過した2024年10月、「蓄電池を導入したい」とご相談をいただきました。きっかけとなったのは、プラグインハイブリッド車(PHEV)の購入でした。
弊社の建物は高気密・高断熱住宅のため、このようなこともあろうかと、壁や基礎を壊すことなく電気の配線程度は内外を行き来できるように、新築時に基礎へ予備の埋設管を設けていました。
「用意しておいて良かった」と少し誇らしく感じる瞬間でもあります。
しかし、ここは第一の難関をクリアしたに過ぎず、建物内に配線を通したら、今度は床下から分電盤までどのように配線工事ができるかが第二の難関です。
この部分も気密性に大きな影響を与えるため、建物内に配管スペースと空配管と呼ばれる予備管を用意してあったのですが、残念なことに、径が細く使用することができなかったのです。
そのため、ユニットバスと壁の隙間から配線を立ち上げ、配線廻りをコーキングして気密性を確保する方法で工事を進めました。
会社の立ち上げから10年以上、リフォーム専門店で活動してきました。ここ数年は新築の設計と施工に注力するため、リフォームの活動は最小限に絞っていましたが、今回の工事でリフォーム工事の難しさをあらためて実感しました。
気密性を重視していない建物であればなんの問題もない配線工事でも、高気密の建物では配線一本程度の隙間が大きな問題となります。
私と電気工事店の担当者は、図面だけでなく実際に床下に潜ったり、小屋裏に上ったり、数時間かけて現地調査を実施しました。
今回工事を担当した電気工事店は、弊社の新築工事にも携わっており、気密施工の重要性と難しさを十分に理解しています。現地での打ち合わせ後も、「念のため、もう一度現場を確認したい」と電気工事店側から申し出があり、後日あらためて2回目の現地調査を実施しました。
正確な時間は計っていませんが、事務所と現地を行き来する時間や調査の時間を合わせると一回あたりおおよそ2時間~3時間程度はかかります。仮に1回あたり3時間とすると2回で6時間。
話は脱線しますが、6時間は私たち建築士にとって製図試験の時間(たしか6時間30分)に相当します。6時間半で課題を読み取りプランを完成させ、要求された複数の図面を手書きで書き終えなければならない試験です。今、思い出しても少しゾッとします(^^)
そして今回、私と電気工事店の担当者は、10mm~20mmの配線をたった2本通すために、製図試験相当の時間を費やすことになりました。
このことからもリフォーム・リノベーションが簡単ではないと想像いただけると思います。
気になるのは実際の電気代
このような経緯で進められた工事でもあり、お客様が数百万の投資をして導入された蓄電池ですから、その効果が大変気になります。
データを見るためには最低でも春夏秋冬を1回は過ごす必要があるため、導入から1年以上が経過した2026年2月、お客様からじっくりお話を伺う機会をいただきました。
その内容を以下に記載します。

お客様は弊社が建築した延床面積32坪の平屋で、ご夫婦お二人暮らし。
冬は、エアコンの暖房のみで朝の起床とともに暖房をつけ、晴れている日であれば数時間後の8時30分頃にエアコンを消しているそうです。
普段過ごす場所はほとんどがLDKで、日中は十分に日射が得られるため、夕方までは暖房なしで過ごせることが多いとのことでした。
一方、夏は起床とともに冷房を運転し、夜中の1時から2時頃に切れるようタイマーを設定しているそうです。多少の前後はあるものの、感覚としてはほぼ一日中つけっぱなしとのこと。
このように、冷暖房を我慢することのない暮らし方で実際の電気代はいくらになっているのかを聞いてみました。
年間の電気料金は172,536円(月平均:約14,378円…①)で、売電収入は年間34,128円(月平均:約2,844円…②)だったそうです。
これらを差し引くと、実際に電力会社へ支払った金額は年間138,408円となり、月平均では約11,534円という結果でした。
話を聞きながら私が感じていたことは、ご夫婦2人暮らしとはいえ、奥様は日中の在宅時間が長いにも関わらず、電気代が安いということ。そして、車にはほぼ毎日充電をしているのに電気代にはさほど影響がないのか……という疑問でした。
さらに数百万の投資をして導入した蓄電池の効果がこんなものか……という不満を感じていたのです。
しかし、お客様は「月平均で約400Kmを電気で走っているから、その分のガソリン代が浮いているので、まあ、良しとしようかな」と笑って話してくださいました。
詳しく話すと、実際に走った車のデータから、電気で走るKm数は平均すると月に400Km。購入された車の燃費は1リットルあたり14kmなので、
400km ÷ 14km/L = 約28.57L
約28.6L程度のガソリンが浮くことになります。つまり、28.57リットル×1リットル150円と仮定すると=月々¥4,285浮く計算になります。
年間にすると約51,600円の削減になっているそうです。

蓄電池導入後の効果
しかし、お客様の「良しとしよう」という言葉にほっとしながらも、どうしても疑問を感じずにいられない私は「念のため、太陽光・蓄電池のモニターを見せてもらってもいいですか」とお願いしてみました。
「もちろんいいよ」とお客様は快く了承してくださり、早速モニターを確認しました。
「あっこれだ!」
お客様も見逃していた『蓄電池に貯めた電気』という項目を見つけたのです。
さらに詳しく確認していくと、
1年間で7,860kWhもの電気が蓄電池に貯められていたことが分かりました。
この電力量をお金に換算すると、電気代を35円/kWhした仮定した場合
7,860kWh ×35円/kWh = 275,100円/年になります。そして月々にすると約¥22,920/月…③もの電気代になるのです。
この数値について専門業者に確認したところ、「蓄電池に貯められた電気は、エアコンや冷蔵庫、電気自動車の充電など、日常生活で使われている電気として考えてよい」とのことでした。
この説明を聞いて、私が抱いていた3つの疑問は解消されました。
ここまでをまとめてみると、
①年間の電気料金:172,536円(月平均14,378円)
②年間の売電収入:34,128円(月平均2,844円)
③蓄電池による自家消費電力の価値:約275,100円(月平均22,900円相当)
①-②+③で計算すると、実際の電気利用額は月平均で約34,459円になります。
ただ、③の電気は太陽光発電でつくった電気を蓄電池に貯めて、昼夜を問わず(特に夜間)自家消費しているため、電気代は0円です。
そのおかげで電力会社に支払うお金は、電気料金から売電収入を差し引いた月平均で約11,534円に抑えられているようです。

電気代高騰時代の蓄電池活用
このことから、今回導入いただいた12kWhの蓄電池は、その効果だけでも年間約275,000円分の電気代削減につながっていると考えられます。導入コストも10年前後でペイできそうです。
また、12kWhの蓄電池による効果が月平均22,920円相当であることを考えると、さらに6kWh程度増設できれば、現在の電気料金(月平均11,534円)をゼロにできるかもしれません。
もちろん、天候の影響、季節ごとの発電量の変動もあるため、毎月の支払いを完全にゼロ円にすることは難しいですが、年間を通して見れば限りなくゼロに近づけることは十分期待できそうです。
私の自宅の屋根には約30kWの太陽光発電設備が載っているため産業用扱いとなり、つくった電気はすべて電力会社に買い取ってもらう契約になっています。そのため、その電気を蓄電池に貯めることができず、これまで導入を見送ってきました。
しかし、電気代が高騰し続ける昨今、蓄電池の導入については検討してみる価値がありそうです。
